宅建業法⑤「営業保証金制度」【宅建独学コース】

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宅建業法①~

手付金を預けていた仲介業者が倒産してしまって、手付金が戻ってこなかったよ…(泣)

 

なんて事件が起きると大変ですよね。

そこで、宅建業法には、宅建業者にあらかじめ一定の金額を供託所に預けさせ、お客さんに万が一損害が生じた場合、そのお金で救済する、といった「営業保証金制度」が用意されています。

 

「営業保証金制度」とは?

営業保証金流れ・とも丸*

「営業保証金制度」とは、宅建業者が営業保証金供託所供託(預ける)し、宅建業に関する取引で損害を被った者(宅建業者以外)に営業保証金の範囲内で還付する仕組みです。

※供託所……法務局、地方法務局

 

宅建業者は、宅建業の免許を取得しても、営業保証金供託し、免許権者にその旨を届け出なければ業務を開始することができません。

 

免許権者……免許を受けた都道県知事か国土交通大臣。

つまり、業務を開始するには、必ず「供託」が必要になるってことだね。

 

営業保証金の供託

 

営業保証金の供託金額

供託所に供託する金額は

  • 主たる事務所(本店)1000万円
  • 従たる事務所(支店)1ヶ所につき500万円

例えば、本店と支店を3ヶ所で業務を開始しようとする場合、供託する金額は、

1000万円+500万円×3=2500万円

になります。

 

金銭以外で供託できるもの

営業保証金は金銭のほか、国債証券などの一定の有価証券でも供託することもできます。

ただし、有価証券の場合は、国債は額面どおり100%地方債・政府保証債は額面の90%その他の有価証券は額面の80%の評価となります。

国債額面金額の100%
地方債・政府保証債額面金額の90%
その他の有価証券額面金額の80%

株式や手形は、有価証券として供託できません。

 

営業保証金の供託先

営業保証金は、原則、主たる事務所(本店)の最寄りの供託所に供託することになっています。

 

供託の手続きの流れ

宅建業者は免許取得後、業務を開始しようとする全ての事務所分の営業保証金を主たる事務所(本店)の最寄りの供託所に一括して供託し、供託書の写しを添付した供託の旨を免許権者届け出ることによって、業務を開始することができます。

 

①「免許取得」

↓↓↓

②「営業保証金の供託」

↓↓↓

③「免許権者に届け出」

↓↓↓

④「業務開始」

 

また、すでに業務を開始している事務所以外に、新たに事務所(支店)を新設する場合は、

新設事務所(支店)で業務を開始する、上記と同じく、主たる事務所の最寄りの供託所に、支店分の営業保証金を供託し、その旨を免許権者に届け出ることが必要です。

 

供託の届け出がない場合

免許権者は、免許を与えた日から3ヶ月以内に、その宅建業者から営業保証金の供託の旨の届け出がない場合、届け出をすべき旨の催告をしなければいけない決まりになっています。

なお、その催告が到達した日から1ヶ月以内に宅建業者が届け出をしない時は、免許権者は、免許を取り消せることになっています。

催告(さいこく)……相手方に対して一定の行為を請求すること。

ポイントとして、「免許取得後、3ヶ月以内に供託、届出が必要。」ではなく、「3ヶ月以内に届け出がないと催告される」というニュアンスに注意です。

 

営業保証金の保管替え等

主たる事務所(本店)の移転により、最寄りの供託所が変更する場合、移転先の最寄りの供託所に営業保証金を移す手続きが必要になります。

保管替え

営業保証金を金銭のみで供託している場合、宅建業者は、遅滞なく、従前の供託所に対して、供託金を新たな供託所に移すように請求しなければいけません。

これを「保管替えの請求」といいます。

また、営業保証金の「保管替え請求」をした時は、遅滞なくその旨を免許権者に届け出る必要があります。

 

二重供託

営業保証金を、金銭+有価証券や、有価証券のみで供託している場合は保管替えができません。

そのため、この場合には、移転後の供託所に遅滞なく新たな営業保証金を供託しなければいけません。

しかし、これでは、新旧供託所に二重に供託した状態(二重供託になります。

そこで、新たな供託をした後には、従前の供託所に対して、営業保証金の取戻しの請求手続きが必要になります。

※取戻しについては後述。

「金銭+有価証券」の、金銭部分だけの保管替えもできません。

 

営業保証金の還付等

営業保証金の還付とは、宅建業に関する取引によって損害を受けた者が、営業保証金から弁済を受けることです。

還付を受けることができる還付額は、営業保証金の範囲内(その宅建業者が供託している総額内)となっています。

 

例えば、本店と支店2つ所有の宅建業者の場合だと、2000万円が還付額の限度となります。

 

損害がを受けた者が、宅建業者の場合は、還付を受けることはできません。

 

還付の対象となる債権

還付を受けることができる債権は、宅建業者と宅建業に関する取引によって生じるものに限られます。

※債権(さいけん)……相手方に特定の行為をさせる権利のこと。

 

【還付対象の債権

還付請求できる債権還付請求できない債権
売買代金債権広告代金債権
債務不履行に基づく損害賠償請求権内装・電気などの工事代金
不法行為に基づく損害賠償請求権家賃収納代行業務の債権

 

還付による不足額の供託

損害を受け還付請求権者に、還付が行われると、供託していた営業保証金は不足することになるので、不足額を供託しなければいけません。

不足額の供託の流れ

  1. 供託所から免許権者に還付した旨が通知される。
  2. 免許権者から宅建業者に不足の通知が来る。
  3. 通知を受けて2周間以内に、供託所に不足額の供託
  4. 不足額を供託した日から、2週間以内に供託した旨を免許権者に届け出
「還付請求の流れ」・とも丸*
不足額の供託を怠ると、業務停止処分または免許取消処分になる場合があります。

営業保証金の取戻し

宅建業者が、営業保証金を供託しておく必要がなくなった場合、供託所から供託した営業保証金を返してもらうことができます。

これを「営業保証金の取戻し」といいます。

取戻しができる要件

取り戻すことのできるのは、営業保証金の全部または一部が不要となった場合です

 

免許が無効となるケース

  • 免許の有効期間が満了し、更新しない場合
  • 死亡、または法人の合併により消滅した場合
  • 廃業等の届出により、免許の効力を失った場合
  • 監督処分として免許取消処分を受けた場合
  • 所在地不明により、免許取消しになった場合

免許が有効であるケース

  • 一部の事務所の廃止により、供託金に超過額が生じた場合
  • 主たる事務所の移転により、新たな供託所に営業保証金を供託した場合
  • 保証協会の社員になった場合

 

取戻しの公告

宅建業者は、「取戻し」をしようとする場合、原則として、6ヶ月以上の一定の期間を定めて、還付請求権を有する者に対して期間ないに還付(還付の請求忘れがないか)の申し出をすべき旨を、官報に公告(取戻し公告)しなければなりません。

 

公告……ある事項を広く一般に知らせること。

官報……国が、毎日刊行する国家の公告文書(新聞のようなもの)。

 

また、宅建業者は、この公告をしたときは、遅滞なく、その旨を免許権者に届け出なければいけません。

 

公告不要な3つの取戻し

  • 主たる事務所の移転により、新たな供託所に営業保証金を供託した場合
  • 保証協会の社員になった場合
  • 取戻し事由が発生してから10年が経過した場合

 

【取戻し事由】【取戻しの手続き】
①免許の効力失効

②事務所の一部を廃止

6ヶ月以上の一定の期間を定めた公告が必要
③本店の移転に伴う供託所の変更(金銭以外)

④保証協会の社員になった

公告不要
⑤取戻し事由発生から10年経過公告不要

 

 

営業保証金の変換

「営業保証金の変換」とは、供託している営業保証金を、他の営業保証金と差し替えることです。

例えば、供託していた有価証券を、金銭や他の有価証券に差し替える場合などです。

なお、「営業保証金の変換」をした場合には、遅滞なく、免許権者にその旨を届出なければいけません。

 

営業保証金制度まとめ

  • 営業保証金制度とは、宅建業の取引で損害を被った者への救済制度。
  • 宅建業者は、免許取得後に営業保証金を供託し、供託の旨を免許権者に届け出ないと業務開始できない。
  • 供託先は、主たる事務所(本店)の最寄りの供託所。
  • 供託額は、本店1000万円、支店ごとに500万円ずつ
  • 還付による不足額の供託は、不足の通知を受けて2周間以内、届け出も供託後2周間以内。
  • 取戻しには、6ヶ月以上の一定の期間を定めた公告が必要なものと、公告不要なものがある。

 

 

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