宅地建物取引業法には、宅建業者や宅建士としてふさわしくない者には、「免許」の取得や、資格の「登録」ができないよう、「欠格要件」が定められています。
この「欠格要件」に1つでも該当した者は、宅建業の免許を受けることも、宅建士資格の登録をすることもできません。
また、すでに免許を受けている者や、資格を登録をしている者が該当した場合は、その「免許」「登録」を取消し・消除されます。
免許と登録の共通「欠格要件」
免許と登録に共通する「欠格要件」は、次の5つになります。
①成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者
成年被後見人・被保佐人は、免許を受けること、資格を登録することができません。
成年被後見人 | 精神上の障害により、物事を理解する能力がない者。 (家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者) |
被保佐人 | 精神上の障害により、物事を理解する能力が不十分な者。 (家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者) |
破産者で復権を得ない者も、財産管理上の問題があるため、免許を受けたり、資格を登録することができません。
ただし、「審判の取消し」や「復権」があれば直ちに免許を受けることや、資格の登録ができます。
②一定の刑罰に処された者
- 禁錮以上の刑に処され、刑の執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者。
- 宅建業法違反など、一定の罰金刑に処され、刑の執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者。
これらの者は、免許を受けることや、資格を登録することができません。
禁錮以上の刑 | 禁錮・懲役・死刑 |
一定の罰金刑 | 宅建業法違反・傷害罪・傷害現場助勢罪・暴行罪・凶器準備集合罪・脅迫罪・背任罪・暴力団対策法違反・暴力行為処罰法違反 |
※上記以外の「道路交通法違反」などでの罰金刑は欠格要件にはならない。
懲役刑等の執行猶予の判決を受けても、その期間内は免許を受けたり、資格の登録ができません。
ただし、執行猶予は実刑と違い、「5年を経過」の縛りがなく、執行猶予期間を満了した時から「直ちに」免許を受けたり、資格の登録ができます。
なお、裁判中など有罪かどうか確定していない場合は、免許取得や資格登録することができます。
③暴力団員等
暴力団員不当行為防止法に規定する暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者は欠格要件に該当する。
④宅建業の免許を取消処分された者
不正の手段による免許取得など、一定の事由により免許取消処分を受け、取消処分の日から5年を経過していない者は、免許の取得、資格の登録ができません。
「一定の事由」
・不正手段で免許取得。 |
・業務停止処分事由に該当し情状が特に重い。 |
・業務停止処分に違反し業務を行っていた。 |
法人が、一定の事由により免許取消処分を受けた場合。
その処分をするための「聴聞」の公示の日前60日以内に「役員」(非常勤も含む)であった者も、取消処分の日から5年を経過するまで欠格要件に該当することになります。
※聴聞(ちょうもん)……処分を受ける者に釈明および証拠提出の機会を与える制度。
法人を動かしているのは役員だから、法人が上記の様な取消処分を受けた場合、その役員も同様に免許・登録ともに欠格している者としているんだね。
⑤免許の取消処分前に廃業した者
④と同じく、一定の事由により免許取消処分を受け、その聴聞の公示日から処分予定日までの間に、相当の理由なく解散・廃業の届出をした者は、届出の日から5年を経過するまで免許取得・資格登録できません。
こちらの場合も④と同じく、取消処分を受けた法人で聴聞の公示日前60日以内に「役員」であった者は、届出の日から5年を経過するまで免許の取得・資格の登録はできないことになっています。
この規定は、免許取消処分に処される前に廃業することで、「処分逃れ」をして5年の縛りなく再度免許の申請や、資格の登録をする行為を防ぐためにあります。
免許のみに関する「欠格要件」
上記の共通「欠格要件」以外の、免許を与えるかどうかの基準は次の4つになります。
1,宅建業関して不正・不当な行為をした者
無免許で、宅建業にあたる宅地の売買等を行っていたなど、免許の申請前5年以内に、宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした者は免許を受けることはできません。
また、その行為に関して刑罰を受けていなくても、免許を受けることはできません。
2,宅建業に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者
宅建業に関して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者は、免許を受けることはできません。
例えば、「怖い系の人」や「裏社会の人間」と呼ばれるような人。
3,関係者に問題がある場合
- 法人の「役員」、または法人・個人の「政令で定める使用人」本人がいずれかの欠格要件に該当した場合。
- (営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない)「未成年者の法定代理人」が、いずれかの欠格要件に該当している場合。
- 裏で暴力団員等に、その事業を支配されている者である場合。
※「政令で定める使用人」…宅建業者の使用人で事務所の代表者。(支店長など)
※「未成年者の法定代理人」…親権者や、家庭裁判所に選任された個人や法人(その役員)
※「成年者」……20歳以上の者、または20歳未満で婚姻した者。
基本的に未成年者でも、宅建業の免許を受けることができます。
なお、未成年者であっても、親権者等の法定代理人などから「営業の許可」を受けていれば、「営業に関し成年者と同一の行為能力を有する」未成年者として扱われます。
この場合は、法定代理人の欠格要件に関係なく、その未成年者本人が欠格要件に該当しなければ免許を受けることができます。
4,手続き的な問題がある場合
- 事務所ごとに、従業者の1/5以上の割合で専任の宅地建物取引士を設置していない場合。
- 免許申請書に虚偽の記載をし、または重要な事項の記載が欠けている場合。
宅建士資格の登録のみに関する「欠格要件」
宅建士資格の「登録」に関する特有の「欠格要件」は、次の4つになります。
1:登録消除処分を受け、5年を経過しない者
下記の理由により登録消除処分を受けた者は、登録消除の処分の日から5年を経過しなければ資格の登録ができません。
- 不正の手段により登録を受けた。
- 不正の手段により宅建士証の交付を受けた。
- 事務禁止処分事由に該当し、情状が特に重い。
- 事務禁止処分に違反した。
- 宅建士証の交付を受けていない者が、宅建士の事務を行い、情状が特に重い。
2:消除処分を受ける前に、登録の削除を申請した者
1:の登録消除処分の聴聞の公示日から処分決定の日までの間に、相当の理由なく自ら登録削除の申請をした者は、登録が消除された日から5年を経過しなければ登録を受けることができません。
共通「欠格要件」の⑤の「役員」と同様に、「処分逃れ」を防ぐためです。
3:事務の禁止期間中に、登録の削除を申請した者
事務禁止処分を受け、その禁止期間中に、本人の申請により登録を削除された者は、事務禁止期間が満了するまで再登録することはできません。
事務禁止処分を受ける前に「登録消除申請→登録削除→すぐ再登録」のような抜け道を許さないためだね。
4:成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
宅建業にかかる「営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない」未成年者は、資格の登録をすることができません。
原則、未成年者は、宅建士資格試験に合格しても、成年者になるまで資格の登録はできません。
※成年者……20歳以上の者、または20歳未満で婚姻した者。
例外として、婚姻した者や、法定代理人から営業の許可を受けた未成年者は資格の登録することができます。
「欠格要件」まとめ(早見表)
「欠格要件」早見表
宅建業「免許」の欠格要件 | 宅建士資格「登録」の欠格要件 |
①成年後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者 | ①と共通 |
②一定の処罰に処された者 | ②と共通 |
③暴力団員等 | ③と共通 |
④宅建業の免許取消処分を受けた者 | ④と共通 |
⑤免許取消処分前に廃業した者 | ⑤と共通 |
1,宅建業に関して不正・不当な行為をした者 | 1:登録消除を受け、5年を経過しない者 |
2,宅建業に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者 | 2:消除処分を受ける前に、登録の削除を申請した者 |
3,関係者に問題がある場合 | 3:事務の禁止処分期間中に、登録の削除を申請した者 |
4,手続き的な問題がある場合 | 4:成年者と同一の行為能力を有しない者 |
一番のポイントは「5年を経過」と「直ちに」。
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